60歳以上の者において、歩行速度が遅いことや低下することが、認知症の発症リスクの上昇と関連しているようだ、という英国ユニバーシティコレッジロンドンからの研究報告。
2015年には、世界中で4700万人近くが認知症を発症している。最も多い認知症の原因には、アルツハイマー病が挙げられるが、他の要因も影響している。
本研究は、英国加齢縦断研究(English Longitudinal Study of Ageing)の、60歳以上の3,932名を対象とした。歩く速度と認知機能のベースライン調査を2002-2003年(Wave1)、2004-2005年(Wave2)に行い、認知症発症の評価は、2006-07年(Wave3)と、2014-15年(Wave7)に行った。解析には、コックス比例ハザードモデルを用いた。
ベースライン時に、歩行速度が速かった者は、認知症の発症リスクが64%低下した。Wave1とWave2の間で歩行速度が低下した者は、認知症の発症リスクが23%増加した。
ベースライン時に認知機能が、良好であった者は、認知症発症リスクが58%低かった。Wave1とWave2間で認知機能が低下した者は、認知症の発症リスクが78%に高かった。
著者らは、高齢者の遅い歩行速度と、歩行速度の低下は、どちらも認知症のリスクを高める因子であるようだ、と結論づけている。ただし、歩行速度の低下と、思考や決断能力の変化の両方が、必ずしも一緒に認知症発症に影響するわけではないようだ、と注記している。
国立健康・栄養研究所